第15回 200名山・妙義山の最高峰、谷急山にある三角点(群馬県安中市)
点名:谷急 2017年05月08日(月)
概要
妙義山 … 赤城山・榛名山とともに上毛三山といわれる。 ー中略ー白雲山(1084m)・金鶏山(856m)・金銅山(1080m)の3山を合わせて妙義山というようになった。この3山を中心とする一帯を表妙義山、その北西面の谷をへだてた対岸の山々を裏妙義山という。-中略-奇岩怪石に富み、日本三大奇勝の一つとされる。
裏妙義 … 妙義山群の中で、仲木沢北西の谷急山、大烏帽子・丁須の頭・御岳などの岩峰の総称で表妙義に対する。
『日本山名辞典』(三省堂)
私が三角点を探訪し始めて、はや7年が経とうとしています。初めは、ほんの軽い気持ちで近所の神社の境内を訪ねたことが始まりでしたが、時を経て妙義山に挑戦しようとしている自分が、あの時の自分とは連続的な繋がりが無いのでは思えるほど差を実感しています。
妙義山はかねてよりいつかは登ってみたい山の一つでした。その山を今回レポートできる事は私にとってもとても喜ばしことであります。妙義山に三角点は山麓のものを含むと6座存在します。その中で一番簡単そうな裏妙義の谷急山の山頂にある三角点に行ってみたいと思います。
取付
当初、予定していたルートは、御岳登山口から登り、御岳 → 丁須の頭 → 烏帽子岩 → 三方境 → P2 →谷急山、のピストンを日帰りで行うという計画を立てていました。これは御岳にある三角点もついでに回ってしまおうとの意図があり、下の地図のルートのような感じで多少長いですが、地図上ではいつも通りの長のように感じられ何も問題ないように感じられました。
「この地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図(南軽井沢)を使用しました。」
しかし、前日に御岳登山口の下見に行った際、地元の方に声をかけられ、「どんな健脚の人でも御岳経由で谷急山に行くのは難しい」とご指摘をいただき、計画の変更をせざるを得ない状況になりました。あの日夕方の登山口で、あのようなご教授をいただいたのは“単なる偶然”なのでしょうが、何となく何らかの意思が感じられてなりません。
それにより御岳に行くか、谷急山に行くか、の選択に迫られましたが、今回は比較的安全な谷急山に行こうと決め、以下のようなルートに変更しました。
「この地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図(南軽井沢)を使用しました。」
スタートにある比較的大きな人工物は国民宿舎・裏妙義です。最新の電子地形図に表記が無いのは既にこの国民宿舎が廃業していることに他ならないからです。後に調べたところ平成28年3月31日をもって廃業しているようですが、建物自体もまだ綺麗で構造物自体はまだまだ使えそうな感じの雰囲気です。
ここから三方境まで巡視道(と地図では表記されている)で行き、そこから谷急山まで尾根伝いに到達するという計画です。これでも往復8時間と結構長大なルートになっています。
道程
旧国民宿舎・裏妙義に車を止め、そこから谷急山に向けて出発しました。宿舎の上に見えているのが地図で見た限り丁須の頭方向ではありますが、そのもの自体は見えないようです。
舗装道路暫く歩いていくと、三方境に導く道標が左に見えてくるので、そちらの樹林帯の方に入って行きます。入ってすぐは五年生位の杉が林立する植林地帯となっており何だかとても不思議な雰囲気のする場所です。
ここから三方境までの巡視道は樹林帯でが延々と続きます。時折遠くであまり聞いたことのない鳴き声が聞こえます。妙義山には猿が生息しているので、猿の鳴き声かもしれません。
こういった巨石が至る所に転がっています。
2時間半ほど樹林帯の中を歩くと谷を突き上げる道になり、そこを登りきると尾根向こうの景色が見え始め、道標も設置されていてそこが三方境だとすぐにわかります。三方境は十字路になっており谷急山の他、丁須の頭や並木沢コースを使い山の向こう側にも行くこともできます。
我々は谷急山に向かうので、ここで左に曲がり尾根伝いに山頂を目指します。
三方境から10分程度で女道分岐に着きます。地図で確認するとここからでも旧国民宿舎方面へ降りることができるようです。実際に歩いて確認はしていませんが…。
P1を通過したあたりから木々の隙間からP2が見えはじめます。赤で囲ったP2は今回のコースの最大の難所で、あの天を突くような頂点にトラバースせず直接通過します。
ここから見ると「あそこ行けるのだろうか?」と少し不安な気持ちになります。
トラバース … 山を一方のルートから別のルートへ横断すること。縦走路にある山を、その頂上へ行かず山腹を横切ること。斜登降。そのルートを「巻き道」という。
『実用登山用語データブック』山と渓谷社編(山と渓谷社)
三方境から約45分でP2の肩に到着。だいぶ高度も上がってきており、かつ切り立っているいることもあり見晴しが段々と良くなってきています。ここからロープや鎖が連続してして続きます。
人一人がやっと通れる幅しかない登山道。景色は最高ですが、右下は奈落となっています。慎重に進みます。
鎖が出てきました。慎重に進めば何の問題もないですが、下は切れ落ちていて見えません。
三方境から約55分、P2の山頂に到着。ガイドブックにも“砲弾型の岩峰”とあるように、狭いですが360°の大展望です。ここでようやく谷急山の山頂が姿を現します。
遠く浅間山も見えます。ここからまた急降下が始まります。
P2から先はまた急降下が始まります。右上に見えているのが谷急山。谷急山自体は比較的なだらかな山です。
急降下しコルに着くころ、V字キレットが出現します。岩の切れ目から向こうに景色が見えるさまは圧巻です。
キレット … 連なる稜線が、コルと呼ぶにはあまりに急峻に切れ込んでいるところ。または、山稜がV字型に深く切れ込んで低くなっているところ、割れめ。
『実用登山用語データブック』山と渓谷社編(山と渓谷社)
その後、P3・P4・P5・P6経て三方境から約90分で、谷急山山頂までの最後の登りに着きます。先ほどP2から見たように斜面は多少きついですが、ロープや鎖場が出てくるほどの傾斜ではないです。
上記の登り口から約5分で山頂に到着します。
到達
そこに三角点はありました。
三等三角点 谷急
谷急山山頂は蝶が舞い、360°の大展望です。長野県の浅間山が印象的です。
動画
三角点探訪日記 三等三角点 谷急(群馬県安中市裏妙義谷急山)2017/05/08
データ
- 点 名 谷 急
- 等 級 三等三角点
- 設置年 明治47年06月08日
- 所在地 〒379-0304群馬県安中市松井田町北野牧
- 時 間 旧国民宿舎・裏妙義から約4時間
- 難易度 ★★★☆☆
一口メモ … 概ね特殊な道具が無くても登れるが、P2周辺のみ危険が伴う。ロープや鎖は設置されているので技術的には難しくはないが、万が一滑落したら大事故をもたらす可能性がある。
当ブログを参考に、実際に行かれて起きる不利益に対して当ブログ管理者は一切責任を負いません。
参考文献
- 三省堂日本山名事典
- 三省堂
- 本
- 実用 登山用語データブック (山岳大全シリーズ)
- 山と渓谷社
- 本